2016年10月15日土曜日

ミトラmemo19 麻原逮捕でオウムは終わるか① 続き

1995年 週刊新潮 5月18日号
p139~141

違いはサリンとの拳銃だけ
 もっとも、「第一回SGI各国理事会」と銘打たれたこの会議、学会幹部の説明によれば、3月初めから予定に入っていたというのだが、
「本来、単に海外の布教基盤設備を目的とする会議だったのが、オウム騒動で内容が全変わってしまったんです」
 と語るのは、ある学会ウオッチャー。
「というのも、この理事長会の前に、かなり頻繁に法務関係のスタッフを集めた秘密会議が行われていたのです。もちろん、宗教法人法の改正やカルト宗教批判による影響とその対策を検討するためのもので、その成果が理事長会で報告され、さらに協議されたものと見ていいでしょう」
 そして、出された結論が、「教学運動の一層の振興」ということだった。学会事情に詳しいジャーナリストの乙骨正生氏に、その中身を解説してもらうと、
 「実は、聖教新聞上で5月4日から池田氏による法華経の方便品・寿量品抗議の連載がスタートしている。今度の理事会でも、この二つの教典を学んでいくことが決ったのですが、これらは、日蓮正宗では法主だけが抗議の資格を持っているような最重要の教典なんです。その講義を池田氏がするのは、宗教法人法の改正に向けて、今から本山に対して競技場の優位性を持っておこうという一種のアリバイ作りに他ならない。本来の教義に基づく法主に対抗して、教祖池田という概念を作っていくつもりでしょう」
 教義の徹底で、オウムのような”カルト集団”とは一線を画していることをアピールできれば一石二鳥という計算のようだが、どうやらその作戦も空回りに終る可能性が高そうだ。何しろ、オウムの実態が明らかになるにつれ、学会幹部の中からさえ、
「知れば知るほど、オウムと学会はそっくりだ」
 という声が上がり始めているからである。
「ある副会長クラスの男が酒の席で、オウムの金集めや海外進出の仕方、有名人の使い方、役所にスパイを送り込む手口などを話題にして、しきりに、”そっくりだなあ、よく真似しているなあ”と感心していたそうですよ」
 というのは、元学会顧問弁護士の山崎正友氏。
「そもそも、池田と麻原の2人が実によく似ていますよ。麻原は自分の血を信者に飲ませたりするそうですが、池田も自分の食べ残しを学会の幹部に食べさせて忠誠度を見るなんてことをする。人に対しての疑り深さや絶対的服従を強いる点、女癖の悪さや銭に細かい所までそっくりです」
 ついでにいえば、コトあるごとに宗教弾圧だと騒ぎ立てる点や何かと「地獄に堕ちるぞ」と言い出すのも同様。違いは、学会はサリンと拳銃を使わなかったことだけ、なんて声もあるのだ。
「今度の事件で、オウム問題はキチッと解決するでしょうが、学会の方はまだそうは行かない。その意味では、学会問題の方がより複雑ですよ」
 と指摘するのは、評論家の内藤国夫氏。
「池田は、相変わらず政治の私物化によって日本の支配を狙っているのだから、国民生活への影響はまだまだ続くわけです。わが国の国民にとっては、真綿で首を絞められているようなものです」
 やれやれ、一難去ってまた一難とはこのことか。

オウムと過激派 統一協会との奇妙な「接点」
”ああいえば上祐”の言うことだから額面通りには受けとれないが、「オウムにスパイが入り込んでいる」ことが判ったのだという。上祐氏の言うスパイとは、いわゆる公安のそれを指すのかどうかはっきりしないものの、オウムが統一教会と新左翼との間に、奇妙な接点を持っていたことは確かな事実だった。

 今から4年前、東京・練馬の「練馬文化センター」で奇妙な集会が催された。
「熱き心あつまれ!」という呼びかけの『真の自由と平等を求める10・20市民の集い』というものだったが、大会アピールは、
<今、豊かな物質文明の陰で許されてはならない人権侵害が行われています。(略)
 今こそわたしたちは、鋭い目をもって、マスコミのあり方、そして国家権力の動向を真剣に考えなければならない時期に来ているのではないでしょうか。わたしたちは、思想・信条を越えて、マスコミの情報では本質を見極めることのできない問題を、この集会において共に考えてみたいと思います>
 と、さながら”反権力統一戦線”をうたい上げている趣があった。参加した団体も、
「反天皇制全国個人共斗<秋の風>」、「不当捜索押収連絡会のように、一目でその目的がわかるものから、「ガサ子ちゃん倶楽部」という不当な”ガサ入れ”(家宅捜索)に反対すると称するグループや、「人権110番」という比較的名の知れたものまで雑多だった。
 会場の演壇に立ったのは、宗教学専攻の大学教授のほかに、『無法ポリスとわたりあえる本』の著者・千代丸健二氏、長年、反原発・環境保全・反差別運動に取り組んできた『人権尊重を求める市民の会』代表の中島眞一郎氏、北朝鮮のスパイだとして旅券を取り上げられた横須賀のスナック「夢見波」の八尾恵さんといった顔ぶれだった。
 オウム真理教からは青山顧問弁護士と出家宣言前の鹿島とも子が出席したが、主催者は「真の自由と平等を求める市民連絡会」を名乗り、オウム色は極力排除されていた。
 共産党の「赤旗」によると出席者や団体は、ブント=共産党主義者同盟、日本赤軍、革労協、第四インター、といった過激派につながりがあったり、機関紙に登場している面々だという。
 もっとも、当日スピーチをした「救援連絡センター」事務局長の山中幸男氏によると、
「集会には個人として参加したのであって、センターとあの集会は関係ない。当時は熊本・波野村の問題でオウムの青山弁護士が国土利用計画法違反で逮捕されていた。弁護士が普通そんな事では逮捕されないわけで、これは人権全体の問題だと思って参加したのです」
 が、新左翼に詳しいジャーナリストはこういう。
「オウムの建設大臣で捕まった早川紀代秀がブントの戦旗派で赤軍最後の世代という情報もありますが、ガセだと思いますね。早川が神戸大で全共闘やっていたのは確かですがセクトには属してなかった筈ですよ。いずれもストレートには新左翼の組織にはつながりませんが、団体メンバーが個人として新左翼運動をやっているとか、日本赤軍の裁判を応援しているということですよ」

「国家権力内謀略グループ」説
 この集会の一年前、
「強制捜査は宗教弾圧」
「無抵抗を貫くオウム側 攻撃的なのはむしろ村側」
「行政指導に重大欠陥 『信教の自由』を完全に無視」
 と書き立てた新聞があったが、オウムの機関紙ではなかった。統一教会傘下の新聞として知られる『宗教新聞』の「オウム真理教現地レポート」の連載である。
 オウムが熊本県波野村に進出したのは5年前の90年、移住を強行しようとして村民と対立し、森林法、国土利用計画法違反で熊本県警の強制捜査(同年10月)を受けて、早川、青山の両教団幹部らが逮捕される事態に発展した。『宗教新聞』の「現地レポート」はその直後の連載であった。
 さらに、強制捜査直前には、麻原教祖のインタヴューを1ページ全てを使って掲載。
<オウム真理教というと、あの坂本弁護士一家失踪事件以来、反社会的イメージが定着してしまった。しかし、ただ同弁護士と衝突していたというだけで、一方的に犯人扱いするのは間違っている。恨みを受けた過去の経歴もあるだろう。深夜音も立てずに拉致が行われたというのはむしろ鍵をもちうる立場の人物か、信頼しきっていた人物かの線が濃厚であろう。そこで未だに報道されていないオウム真理教の教えの根本や活動について、救主の麻原影晃師に聞いていた>
 という入れ込みようで、
「迫害は甘受しても法のために妥協はせず」
 との麻原教祖の言い分を特筆大書したのだった。
 波野村役場職員によると、
「オウムは波野村でたくさんチラシを配りましたが、オウム擁護の宗教新聞を引用したものは2、3通りあり、90年の9月から11月にかけて配布されました。手渡しでは受け取ってもらえないので、村の550戸、ほとんどに郵送されています」
 孤立無援のオウムには、百万の援軍だったろう。波野村だけではなく、熊本市や福岡、大阪などでもこのチラシは街頭などで配布された。
 もっとも、評論家の茶本繁正氏によると、
「当時の統一教会は、オウム完全擁護の立場を取っていますが、最近の統一教会系『中和新聞』ではオウム批判を展開している。まあ、統一教会はコロコロ意見を変えますからね・・・・」
 というのだが、オウムの中には、
「新左翼、統一教会、創価学会の脱党、脱落組がかなりいる事は確か」 (公安関係者)
 といわれる。新左翼の代表的組織の革マル派も機関紙『解放』で、一連のオウム関連事件を、
「国家権力内謀略グループの犯行」
 と断定している。奇々怪々というしかない。

p139
18オウム統一協会と奇妙な接点139
p140
18オウム統一協会と奇妙な接点140
p141
18オウム統一協会と奇妙な接点141

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1995年 週刊新潮 5月18日号
p136~139

▼資産「一千億円」で浮上した覚醒剤製造疑惑  
 教団の資産およそ一千億円-。信者からの強引な資産収奪はかねて報道されていたものの、さすがに科学技術省の故・村井秀夫長官がそう豪語した時には報道関係者も度胆を抜かれた。一体それだけの資産をどう形成していったのか。捜査の過程で浮上してきたのは、覚醒剤を製造して暴力団に流していたのではないかという疑惑だった。

 それにしても、89年にオウムが正式に宗教法人の認証を受けた時点では、その資産は4億2300万円。わずか6年で250倍にも増やしたわけで、何とも驚異的というほかない。
 「もちろん、我々もオウムの蓄財術には重大な関心をもっています」
 と、ある捜査関係者もこう語る。
「3月22日の強制捜査の際、教団施設から現金7億円と時価1000万円分の金塊が発見されていますが、全国各地に、確認できている分だけで教団は約18億円相当の不動産も保有しているんです。もちろん、判明していない不動産はまだ他にもあるはずです。そして、注目すべきは、これらの不動産にはほとんど抵当権が設定されていないこと。つまり借金をした形跡がない。他にも、海外の支部関係で約40億円、薬品、工作機械関係で約7億円、熊本県波野村からの立退き料が約6億円等、潤沢な資産があると我々は見ています」

 が、それやこれやを合計しても、まだせいぜい80億円程度である。

 自らも資産強奪の憂き目に遭った元信者が述懐する。
「麻原が金集めの達人であることは間違いありません。出家の時にはそれこそテレホンカード一枚に至るまであらゆる資産を寄進させるし、実際、私も3000万円やられました。中には30億円もの資産をとられた人もいます。それに、くだらないイニシエーション(儀式)をさせるたびに5万とか10万とかをふんだくる。オウムではあらゆる行為がカネ、カネ、カネなんです。でも、それらを合わせたって、せいぜい数百億円というところじゃないでしょうか」

 が、故・村井氏が4月7日、外人記者クラブで居並ぶ内外の記者たちを前に豪語した額は”1000億円”である。自らの勢力誇示のために多少の誇張があったとしても、目を見張る額には違いない。

 そこで捜査当局が俄かに注目したのが、覚醒剤にまつわる”蓄財”だったのである。

暴力団に流れた覚醒剤
 実際、すでに強制捜査によっておよそ40種類にのぼる大量の化学物質や薬品類が押収されたが、その中に、覚醒剤の前段物質の有機合成原料「フェニルアセトニトリル」も含まれていたし、施設から脱出した複数の元信者の毛髪や尿などから覚醒剤反応も出ている。

 有機合成化学が専門の山川浩司・東京理科大薬学部教授によれば、
「フェニルアセトニトリルという物質は、これ自体で何かに使うというようなものではなく、フェノバルビタールという睡眠薬か、アンフェタミン、すなわち俗にヒロポンともいう覚醒剤の製造にしか用途がありません。が、前者の睡眠薬をつくるには尿素が必要ですが、捜索では尿素は発見されていないようですから、覚醒剤を製造していたとしか考えられないんです」 

 ある女性の元信者もこう証言する。
「血のイニシエーションという儀式で得体の知れない液体を飲まされたんですが、直後に、身体がふわふわ浮かぶという幻覚症状を起し、何時間か意識を失ってしまいました。施設を脱出した後で警察にその時の状況を説明したら、それは覚醒剤とヘロインを混ぜたものを飲まされたんじゃないかと言われました。何でも終戦直後に同じようなクスリが出回って、それを使った場合と症状がよく似ているんだそうです」

 警視庁の公安関係者がいう。
「実は、オウムと暴力団との関係については、日本最大の広域暴力団傘下のある有力な組との”不動産取引”を巡るつながりが以前から分かっていました。しかし、それを探るうちにそれだけではなく、覚醒剤でのつながりもあるという情報が出てきたんです。その内容は、当初はオウムの方がイニシエーションに使う目的で覚醒剤を組から入手したところ、純度が高くなかったため、それならば自分たちで製造してしまえということになったというんです。で、その後は逆にオウムが組に覚醒剤を卸す関係になったというものでした。」

 実際、オウムとその暴力団との親密ぶりについては、オウムの土地売買に関わった不動産業者もこう証言する。
「土地売買を巡っての組とのトラブルが心配だったので総務部長の名刺を持ってきた早川(紀代秀・逮捕済み)に聞いたら”尊師とその有力組長は親しいので大丈夫です”といわれたことがあります」
 先の公安関係者が続ける。
「覚醒剤の末端価格は、出回っている量にもよりますが、1グラムあたり2万円が相場。そして、オウムのプラント設備は、全世界の供給量がまかなえるくらい大規模なものでした。オウムは覚醒剤を信者に投与するだけでなく、暴力団に流すことで巨額の利益を得ていたんじゃないか。そうでなければ1000億もの資産形成はとても無理だと、我々は見ているんです」

 あとは捜査の進展を待つしかないが、実をいえばこの覚醒剤疑惑ともうひとつ、捜査当局が目下、重大な関心を寄せている問題が存在する。
「それは信者の生命保険に絡む疑惑なんです。というのも、信者の中に5人ほど保険のおばちゃんがいて、ここ数年、オウム関連の保険金支払いが急増しているというんです。受取りがオウムになっている契約者が度々脂肪していて、中にはかなり強引な請求があるというんんです。コトによると保険金殺人の疑いもあるんじゃないかと、捜査現場はかなり緊迫しています」(同)
 ここまでくれば何が出てきても不思議ではない。

▼オウム騒動で「池田大作」が招集した「緊急会議」
 一連のオウム騒動とは裏腹に、近頃、妙に鳴りをひそめているのが、池田大作センセイ率いる創価学会。だが、それはあくまで表向きの話。宗教法人法の改正まで取沙汰され始めた事件の展開に慌てふためき、降りかかる火の粉をいかにして払いのけるか、幹部を緊急招集して鳩首協議の真っ最中だというのである。

 実は、地下鉄サリン事件が発生し、オウム真理教が俄かにクローズアップされ始めた当初は、池田氏も暢気にテレビのワイドショー見物を決め込んでいたらしい。

 青山弁護士が麻原教祖を必死に擁護する姿を見ながら、
「青山という男はよくやっているな。あれくらい体を張ってオレを守れる奴がウチにいるか。たいしたもんだ。」
 と、オウムを褒めそやすような感想さえ口にしていたというのだ。
 ところが、警察の捜査が進展し、コトの重大性が明らかになるにつれて、顔色は一変していくことになる。
「問題のひとつは、ある学会幹部とオウムの関係を取沙汰する情報が流れたことです」
 と、ある学会関係者。
「その幹部は、電器メーカーを経営し、株の仕手筋としても知られる人物で、別の仕手仲間と共にオウムと資金面のつながりがあったというのです。それを聞くや、池田は学会内部の”情報班”に極秘調査を命じた。その結果作られた部外秘の『オウム真理教関係図』では、その幹部とオウムとが、ある人物を介して線でつながれている。このことが表に出れば学会にも批判の矢が向けられるのは必至です」

 ところが、問題はこれだけでは済まなかった。同時に重大事となってきたのが、この騒動を機に、俄に現実味を帯びてきた宗教法人法の改正問題。さらには、海外における日本の宗教団体に対する風当たりの強さだったのである。
「一幹部の問題だけなら、何とか言い逃れもできるでしょうが、宗教法人法の改正となると学会の存在基盤それ自体を揺るがす大問題となってくる。また、海外布教に力を入れている学会にとって、オウムと同じような目で捉えられることは大変な痛手ですよ。すでに宗門との決別以来、世界各国で学会の海外組織であるSGIからの脱会者が続出している。たとえば、フィリピンでは、この3月に、数百人規模で大量脱会者が出る事件が起きているんです。そこへ、今度のオウム騒動ですから、まさに弱り目に祟り目というしかありません」(先の学会関係者)
 そこで、いよいよ顔面蒼白となった池田氏、さる5月1日から各国のSGI理事長や前理事長を東京に招集して、緊急の対策会議を開催することになったというのである。

②に続く

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